骨董・古美術を楽しむ
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六古窯(瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前)

瀬戸を除いて焼締め製法を主体としており、黒褐色の焦げや、灰が降りかかった美しい自然窯変など、各地それぞれの土味と特有の造形を楽しむことができます。丹波は緑色ガラス状のビードロ釉が美しく、常滑は自然釉の美しさと力強さを備え、備前は胡麻・火襷などに特徴があります。信楽の胎土は長石混じりで荒く変化に富むも侘びた雰囲気を醸し、常滑は器体厚く野趣があり、備前は赤くキメ細かな土です。総じて室町末頃までの壺・甕は紐作りされています。
【壺類の六古窯の比較】

造 形・窯

口・肩

特 徴・見 処

瀬戸

青磁を模倣した瓶子や印花文貼花文の技法は他古窯に優る

 

古窯中最も進んだ造形技法と釉
灰釉に長石が多く混合される

常滑

六古窯中で壺類の生産最多
器底に砂が付着するもの多い

鎌倉以降N字形口作り
肩に三筋文

全体に厚作りで器肌荒く力強い器体内部が調整された跡がない

越前

壺・甕・摺鉢が主体

室町以降口の折り返しは目立たず、口は小径

甕・壺内部に刻文あるもの多い
常滑と似るが内部仕上げ丁寧

信楽

室町末まで紐作りが基本
17世紀半まで穴窯

口作りのみ轆轤仕上げ
肩に桧垣文

長石・珪石混じりの胎土。室町末期まで自然釉、その後人口灰釉

丹波

轆轤技術は六古窯中で上位
慶長年間に他に遅れ登窯導入

室町末〜玉縁の口作り

自然釉は鮮緑色のものが多い
登窯導入後施釉陶が多い

備前

室町末頃に山土→田土に変る。桃山以降大窯にて窯印有

頸部の立ち上がり低い
肩に直線文と波状文

胡麻・火襷・牡丹餅。器肌細かい
中壺以下が多い。耳付のもの多い

(1) 瀬戸美濃 
六古窯中唯一鎌倉時代から施釉陶器が作られていた窯で、伝説の陶祖加藤四郎左衛門景正(実在?)が道元禅師(1200〜1253)に随行して中国から施釉陶器の技法を持ち帰ったことで革新が図られたと言われています。近年、美濃各地に古窯趾が発見され、美濃でもほぼ同時期にやきもの生産を始めていたようです。
桃山時代には黄瀬戸・瀬戸黒・志野などが大窯で焼かれ、織部は新しい登窯で、多くの茶道具類が盛んに焼かれていました。ただし、志野や織部などの桃山期の優品は、可児市・土岐市の接合する辺りが主産地であり、美濃出身の武将茶人・古田織部の切腹によって、江戸初期に美濃陶が一旦衰退し、江戸中期以降瀬戸で盛んになったようです。
《古瀬戸》
狭義には、12世紀末〜室町時代末期頃までに灰釉又は鉄釉を施して瀬戸周辺で焼かれた陶器類を指します、広義にはそれより時代が下っても、鉄質黒釉を施して比較的薄作りした陶器を言います。
初期には灰釉の四耳壺や瓶子、鉄釉が出現した後は広口瓶や仏花器が作られ、室町末には茶壺や白天目茶碗などが作られました。碗類は始めは付け高台でしたが、次第に削り出し高台へと移行します。古瀬戸の壺類は、紐造りしてから表面を轆轤で仕上げられています。
茶入などの渋紙手はその釉調の一つで、鉄釉が胎土の赤色と融和して渋紙のように見えるものです。
《黄瀬戸》
  古瀬戸の流れをくみ、灰釉から進化した淡黄色釉(木灰釉)を施した陶器で、油揚げ肌とも言われるジュワッとした深い釉調の柚子肌が特徴です。釉に明るい光沢と細貫入があり、紋様のないものはぐい呑手(六角が好まれる)とも言います。現代では油揚げ手の再現は大変困難のようで、贋作はほとんど見かけません。線描の絵にタンパン(硫酸第二銅)で緑斑文を施したものが多く、瀬戸・美濃の作品群の中では一番薄作りです。
《瀬戸黒》
鉄釉を掛けて焼成中に長い鉄鋏で引き出して急冷(水に入れる)することによって光沢のある黒色を作り出す黒無地の陶器です。茶碗が多く、天正年間(1573〜1591)に始められたので「天正黒」とも、焼成方法から「引出黒」とも呼ばれます。瀬戸の名を冠するのですが実際は美濃で作られていました。
通説では楽焼に倣った急冷技法とされていますが、荒川豊蔵氏から焼成具合をみるテストピースに学んで生まれたという異説も主張されています。
楽焼は手捏ねされて、釉調も柔らかさの中にややかさついた感じのする軟陶です。これに対して、瀬戸黒は轆轤成形の後に箆加工したもので、無骨で荒々しくも、釉調は滑らかで胎土とともに堅く締まった感じがします。
《志野》
モグサ土と言われるほんのり黄色味のある多孔質な白土を用い、鬼板で文様を描くなど、わが国初の絵付を施し、白い半透明の長石釉を厚く掛けた陶器です。志野の見処は、柚子肌と口縁や釉際などに赤味がほんのりと出る景色にあり、釉が滑らかに解けたものより失透釉となったものに味があります。
志野釉は白天目(徳川美術館所蔵の茶碗)を先駆として始まったもので、志野焼は広義には織部焼きの一種ですが、沓形のものはありません。
桃山の志野は、サヤに入れて半地上単室窯で二昼夜以上かけて還元焔焼成されていました。志野の茶道具は、天正(1573〜1591)から慶長(1596〜1614)初期にかけて盛期を迎えたようですが、慶長末期には姿を消しました。
《織部》
桃山時代に瀬戸焼の主流となるやきもので、古田織部(1544〜1615)の好みと指導によって作られましたが、実証資料は未発見です。
釉・文様・形に技巧を凝らし、沓形の斬新な茶碗や型作りの向付、絵付には幾何文様などの特徴があり、志野ほど時間をかけず専ら酸化焔焼成されます。
古田織部は、記録に残る72回以上の主催茶会において、瀬戸・唐津・伊賀のものを取り上げてその振興を図っていたことなどが伺われ、織部的な意匠は茶会出席者の交流を通じて、各地の桃山茶陶に影響を与えたようです。
土岐市埋蔵文化財センターの研究では、織部の在世中には織部焼と言わず、元屋敷窯の廃窯後20年を経て、表千家四代江岑宗左(1613〜1672)の正保元年(1644)の茶会記に始めて「瀬戸・織部焼」の記述がみられるとのことです。瀬戸黒と織部の特徴


名 称

造 形

意  匠

作 品

瀬戸黒

単純半筒形

黒釉を総掛けしたやきもの

茶碗のみ

織部黒

沓形

黒釉を総掛けして沓形で作意が強い

茶碗、向付、鉢

黒織部

沓形

織部黒に鉄絵を加えたもの

茶碗、向付、茶入

総織部

沓形

緑釉を総掛けしたやきもの

向付、鉢

絵織部

沓形

緑釉と鉄絵の組み合わせ(普通の織部)

茶碗、向付、茶入

赤織部

沓形

赤土上に白泥鉄絵を施す

茶碗、向付

鳴海織部

沓形

赤土上に鉄絵、白土上に緑釉を施す

向付

弥七田織部

沓形

可児の弥七田窯製、斑紋緑釉で若干下手

向付

(2) 常 滑 
常滑の陶土は低火度で固く焼き締まる性質をもち、雑な造りの窯で焼成されても歩留まり率が高く、全体に厚作りで力強く器内面が調整された跡がなく、表面の肌は粗く器底は砂底になっているのが特徴です。
朱泥は、明治11年に杉江寿門堂保平が中国人の金士恒に朱泥茗壺の作法を教わり、今日、朱泥急須や煎茶器作りが盛んになったものです
(3) 越 前 
輪状の胎土を重ねる紐造りで、常滑に似るところもありますが、越前の方が壺・甕などの内側も丁寧な仕上げで、器体もやや明るい赤褐色に焼成されています。また、壺、甕などの内側にヘラ描きの刻文があります。越前ではお歯黒壺ほか焼締め雑器のみ製造し続け、茶道具はありません。
越前焼は、室町時代後期には日本海沿岸各地に供給されるほど大量製産されましたが、その隆盛と逆に須恵器の様子が色濃い珠洲窯は衰退します。
(4)信 楽 
信楽の陶土に含まれた鉄分は焼くと比較的明るい赤に発色し、陶土は水簸しない長石混じりで焼成後も粒が白く吹き出て肌合が粗く、全体の景色を作っています。肩に桧垣文あるものが多く、独特の窯変と自然釉の美しさが信楽焼の見処です。壺などの肩造りは、どちらかといえば女性的です。小型壺の「蹲る」は、詫びた味があり茶席の花入として人気です。
三重県伊賀市は信楽と接し、古琵琶湖層に属する同質の陶土を産出するため、雰囲気が似た伊賀焼の産地であり、施釉した茶道具を多く作ってきました。
(5)丹 波 
立杭焼ともいわれ、初期の丹波は、轆轤を用いず甕・壺・すり鉢などを紐つくりしていましたが、次第に口縁部のみ轆轤整形されるようになり、焼成は桃山期まで穴窯で、慶長以降は蛇窯と言われる連房式登り窯で行われました。
江戸中期以降は京焼・美濃焼の影響を受けて施釉陶器も焼かれるようになり、造形も洗練されて型押し・鉄絵・白泥絵などの技法が摂りいれられました。
初期丹波の特徴は紐つくりで、刻文・押印などの文様や耳付の壺などはありません。私的には、ビードロ釉の美しさは六古窯中群を抜くものと思います。
(6)備 前 
伊部焼とも言い、室町末頃までは山土主体の胎土をもって紐つくりされ、下から上へ数段胴継ぎしましたが、その後田土に替わって、轆轤で下から上に一本挽きして継目がありません。
胎土は鉄分が多い赤褐色で、器肌は密で滑らか、釉薬を一切用いない焼締製法は今日まで不変です。技法は焼締陶器としての限られたもので、胡麻・火襷・牡丹餅などを特徴としています。初期の火襷・牡丹餅は自然の産物でありましたが、現代は作為が過ぎ自然の味わいをやや損なっているものも散見されます。
【壺類の六古窯の比較】

造 形・窯

口・肩

特 徴・見 処

瀬戸

青磁を模倣した瓶子や印花文貼花文の技法は他古窯に優る

 

古窯中最も進んだ造形技法と釉
灰釉に長石が多く混合される

常滑

六古窯中で壺類の生産最多
器底に砂が付着するもの多い

鎌倉以降N字形口作り
肩に三筋文

全体に厚作りで器肌荒く力強い器体内部が調整された跡がない

越前

壺・甕・摺鉢が主体

室町以降口の折り返しは目立たず、口は小径

甕・壺内部に刻文あるもの多い
常滑と似るが内部仕上げ丁寧

信楽

室町末まで紐作りが基本
17世紀半まで穴窯

口作りのみ轆轤仕上げ
肩に桧垣文

長石・珪石混じりの胎土。室町末期まで自然釉、その後人口灰釉

丹波

轆轤技術は六古窯中で上位
慶長年間に他に遅れ登窯導入

室町末〜玉縁の口作り

自然釉は鮮緑色のものが多い
登窯導入後施釉陶が多い

備前

室町末頃に山土→田土に変る。桃山以降大窯にて窯印有

頸部の立ち上がり低い
肩に直線文と波状文

胡麻・火襷・牡丹餅。器肌細かい
中壺以下が多い。耳付のもの多い

 

 

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