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箱と銘 |
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(1)箱書と道具 箱書は、本来道具を入手したときの由来や感動の記録であって、己の敬慕する先人が賞玩したものを受け継ぎ、感動を共有しているという伝世品たる証、格の証明として珍重されますが、鑑定証ではありません。 世間には贋作が横行し、贋の箱書や箱書が本物でも中身が真正でないこともあります。個性的な筆ほど真似やすく、贋作者の習熟度もかなりのものです。ただ“箱書がある”というだけで有難がらず、本物のみが具備する品格を見極め、美に共鳴することができる鑑識眼を養いたいものです。 (2)銘 席主は床の掛物によって茶事・茶会の主旨・趣向を表し、諸道具はそれを引き立てるものであるよう取り合わせます。このとき、茶碗や茶杓に『銘』があれば情趣を一層深め、主客の心をつなぐ媒体となって「?啄同時」の境地に導き、互いの心を通わすことができるのです。 銘の多くは、歌枕や古典文学などに因んで付され、ゆかしさと奥深さを伝えていますが、昨今では「無事」「松風」「清風」等ありきたりの銘が横行しており、そんなお道具状況を素直に喜ぶことができません。 |